小学生の卒業袴の準備はいつから?
2023.09.08
最近、小学校の卒業式で、女の子の袴姿を見かけることが増えてきました。実際今年卒業した娘の学校では、女の子の約半数が袴スタイルでした。
毎年上級生の卒業袴姿を見て「私も袴を着てみたい」と楽しみにしているお嬢様や「来年卒業するうちの子も……」と思っている保護者様もいらっしゃることでしょう。しかし、私達親の世代で、自分が小学生の時に卒業袴を経験したことのある方は少ないと思います。いつ頃から準備したらいいか、どんな袴スタイルがあるのかなど、わからないことも多いのではないでしょうか。
そこで今回は、卒業袴のレンタルから準備、写真まで、トータルでプロデュースさせていただいている写真スタジオのスタッフとして、また、同じ歳の女の子を持つ母としての体験談を含めた準備、豆知識などをお話していこうと思います。
INDEX
1.袴の歴史
女子学生が袴を着るようになったのは、明治の中頃と言われています。もともと十二単の一部として身に付けられていた袴は、宮中の女官服にも由来していて、きちんとした身なりの服装として認識されていたのです。そのため、明治になると「女学生の制服」として袴を取り入れるようになりました。振袖と袴の大きな違いは動きやすさ。着物に帯というスタイルに比べると歩きやすく、大正から昭和にかけては袴を着て自転車に乗る学生も散見されたようです。振袖だったらそうはいきません。つまり「優美な見た目と動きやすい機能性」を兼ね備えた衣裳が袴だったのです。
袴姿の女学生でなんとなくイメージするのは「はいから」という言葉ではないでしょうか?これは、大正時代の女学生を描いた漫画「はいからさんが通る」のイメージが強いからかもしれません。今でこそ、袴姿の女性=はいからという認識が強いですが、その語源は明治時代の男性洋服から来ているようです。高い襟のシャツ=ワイシャツ=ハイカラー(high collar)が変化して「はいから」になったと言われています。当時も今も、日本語や英語を略して新語を生み出し、定着する流れは変わらないようです。
明治時代の「高等女学校」への進学率は低く、女学生というのはいわば特権階級。今でこそ、高校卒業か、大学進学かはある程度選べるようになっていますが、当時で言えば「女学生」は多くの女子たちの憧れ。つまり、華やかな袴を身にまとって高等女学校に通うことこそがひとつのステイタスでもあったようです。ちなみに、学問に望む姿としてふさわしい格好とされていた袴。当時は生徒だけでなく先生も着用していたようです。
女学生が袴を着る流れは昭和の初期まで続きました。ファッションに敏感な女学生は革のブーツが登場するといち早く取り入れ、袴にブーツという姿が大きな流行を呼びます。その後も、西洋のアイテムを使って袴姿をアレンジするなど、さまざまなカタチでおしゃれを楽しんでいたようです。おしゃれにこだわる乙女心は今も昔も共通している部分なのかもしれません。
戦後、高度成長期に入った日本の大学生に袴を着るという文化はなくなっていました。生活は豊かになり、大学に通う女学生も増えてきたようですが、卒業式に袴を着るとうい風習はありませんでした。
では、なぜ今や卒業式では誰もが袴を身にまとうようになったのか。それは、1987年に南野陽子さんが主演した「はいからさんが通る」の実写映画がきっかけだったようです。当時のトップアイドルが映画に、歌番組に、袴を着て登場する姿を見て、数人の大学生が卒業式に袴を着て出席したそうです。それが翌年には数百人に増え、気がつけば全国の女学生が身にまとう、日本の風習のようになっていったそうです。
最近では、大学の卒業式だけでなく私服登校の小学校でも卒業式に袴を着用する生徒が増えてきています。近年の小学生卒袴ブームでは、2016年に広瀬すずさんが出演した「ちはやふる」が2017年の小学生卒袴の増加に多大な影響を与えました。2015年と2017年を比較すると2.4倍に急増し、そこから毎年じわじわと増加しています。
大学卒業式の袴、小学校卒業式の袴の流行は、どちらも人気マンガや実写化された映画が大きな影響を及ぼしている事が分かります。卒業式=袴姿という流れは、今後も衰えることはなさそうです。中学校や高校の卒業式は、学生生活で着ていた制服で出席するのが一般的ですが、小学生は、普段から自由な服装である場合が多く、「制服がない」というのも大きな要因として考えられます。
そこで、購入かレンタルかの選択になりますが、多くの方がレンタルを選んでいます。購入後の使用頻度、使用後の手入れの手間や、まだまだ成長段階である子どもの為、サイズの変化なども気になりますよね。
2.レンタルするにあたって
袴には、さまざまなデザインや組み合わせがあります。卒業式に袴を着用したい場合、予約のピークを過ぎてしまうと、他の方の予約で埋まってしまい自分好みのデザインを見付けられなくなることもあります。
納得のいく姿で思い出に残る卒業式を迎えたい方は、袴のレンタルに適した時期を把握しておく必要があるでしょう。まずは、予約がピークを迎える時期や、新作の揃う時期を確認してきましょう。
小学校の卒業式といえば3月が一般的です。多くの場合、3月20日ごろに卒業式をする傾向がありますが、それぞれの学校によって卒業式の日程は異なります。卒業式に袴の着用を考えている方は、年間予定表などで卒業式がいつなのかをチェックしておくと、袴を準備するための予定が立てやすくなります。
レンタル方法
卒業式の日程を確認したら、次は袴レンタルの予約を取りましょう。レンタルには大きく分けて2つの方法があります。
1つ目は写真スタジオなどのレンタル、2つ目はネットレンタル。
スタジオレンタルでのメリットは、実際に見て、試着して選ぶ事で自分にピッタリの衣装を選ぶ事が出来る事。同じ場所で当日の着付け、ヘアメイクもセットになっている事がほとんどなで、一度打ち合わせをしてしまえば当日は手ぶらでお店に行くだけで手間がかかりません。デメリットとしては、小学生に限りますが、当日は朝が早い為、家の近くに限られてしまいます。
ネットレンタルでのメリットは、たくさんのショップがある為、衣装の数は膨大です。必然とお気に入りに出会える可能性も大ですよね。デメリットとしては、前日に届く事がほとんどの為、ギリギリまで実物を目にする事が出来ません。写真とのイメージが違ったり、着てみたら想像と違ったりすることも。また、レンタルと同時に着付けとヘアメイク支度の予約を取る必要があります。中には、着付けをお母さんがYouTubeなどを見ながらするという方もいらっしゃいました。
式当日の注意点
注意点としては着崩れです。卒業式当日は、いすに座って過ごす時間が多くなりますね。袴姿の場合、普段通りの座り方をすると着崩れを起こす場合があるので、座るときのポイントを押さえておきましょう。腰掛けるときには、袴の両脇から手を後ろに入れて、袴を少し持ち上げながら座ります。持ち上げないで座ると、重みで袴が引っ張られたり、後ろのふくらみがつぶれたりして、着崩れの原因になります。
また、背もたれに寄り掛からず、浅く腰掛けることを意識しましょう。腰を下ろしたら、着物の両側の袖を引きずらないように重ねてたたみ、ひざの上に置きます。背筋をぴんと伸ばして、両足は広げずそろえて座ると上品な印象に見えます。
袴は裾が長いので、階段の上り下りには注意が必要です。上るときには前の袴が階段につかないように、袴の両脇から手を入れて、前を浮かせるようにしましょう。袴を浮かせないまま上ると、前の裾を踏んで転んでしまったり、着崩れたりしてしまいます。下りるときは、後ろの裾を注意します。視界に入らないので、上がるときよりさらに慎重に。袴の両脇から手を入れ、お尻のあたりをふんわりと持ち上げましょう。そうすると、裾を踏まずに上手に下りられます。着崩れの心配もありますが、何より安全が第一なので、慌てずゆったりとした動作を意識してください。
袴を着てからトイレに行きたくなったらどうしよう?トイレに行った後、着物や袴が着崩れてしまったらどうしよう?そんな心配をされる方も多いのではないでしょうか。卒業式で着用される袴の多くは、行灯袴といって、股のないスカート式がほとんど。ロングスカートを着ているような感覚でトイレを利用でき、ポイントさえ押さえておけば大きな着崩れは防げます。和式よりも洋式の方が動作がラクに済むので、できるだけ洋式を選ぶと良いでしょう。トイレを利用するときは、まず着物の両袖を帯と袴の間に挟むようにします。終わったら挟んでいた袖を戻し、袴の前後がずれていないか確認してください。手を洗うときは、袖口を濡らさないように要注意。鏡で後ろ姿もチェックしましょう。慣れない和装ですので、慌てないように余裕を持ってトイレに行くように心掛けましょう。
いくら注意していても、慣れない着物と袴を着ていれば、着崩れてしまうことは十分あり得ます。大学生位であれば、自分での応急対処法もありますが、小学生ではなかなか難しいですよね。
学生生活の最後を締めくくる卒業式。大事なイベントだけに、できる限り着崩れを防ぎたいものですが、キレイな袴姿をキープするためには、袴姿での所作だけでなく、着崩れを起こしにくい着付けを施すことも重要です。例えば、しっかりした品質・性能の着付け小物を使うことや、豊富な経験とスキルのある着付け師の方に着付けてもらうことなどが秘訣のひとつです。
3.レンタルに適した時期は?
多くの方が袴レンタルを予約するのは、夏休みの終わりごろです。8月後半~9月にかけて、袴を決める方が多い傾向にあります。
この時期は、袴の新作が登場する時期でもあります。トレンドを押さえた袴姿で卒業式を迎えたいと考えている方は、予約がピークを迎える時期よりも前に、袴を決めておくのがおすすめです。
4月ごろに、袴を豊富に取り揃える店舗も珍しくはありません。というのも、卒業式に着用された袴が返却されるのは3月末ごろです。4月になると、店舗側は新年度の卒業生に向けて、新たな商品をラインアップしていく傾向にあります。
そのため、4月ごろに袴を決めておくのもひとつの方法です。この時期から袴を決める方は少数派ですが数多くの袴から自分好みの1着を選べるメリットがあります。しかし、1年という長い時間で好みが変わってくることもあります。特に色や柄などにインパクトのあるものを選ぶ際は、十分注意しましょう。
早く予約するもう一つのメリットとしては、時間帯です。予約が後になるほど、時間を選べなくなり、人気のない時間帯しか空いていなかったり、式ギリギリになってしまったりしてしまいます。知り合いのママさんはちょうどいい時間予約が取れず、朝5時からの予約になってしまった方もいました。ベストな時間帯から予約が埋まってしまう為、時間枠だけでも夏頃までの早めの予約がおすすめです。
4.衣装選びの最初のポイント
ネットレンタルにしてもスタジオレンタルにしても、予約日が決まった後は着物と袴選びになりますが、今回は小学生ならではの注意点として、草履なのかブーツなのかについて考えて行きたいと思います。
袴スタイルの美しさの決め手のひとつに、袴の丈があります。実は袴もスカートのように丈の長さに違いがあり、足元が草履なのかブーツなのかによって、美しく見える袴丈が異なります。一般的には、草履はやや長めに、くるぶしが見えない程度に着付け、ブーツはやや短めの丈に着付けるのが美しいバランスとされています。ほんの少しなら着付ける位置の調整で対応できるのですが、袴は基本的には裾直しができないので、バランスのいい着姿にするためには、足元のスタイルに合わせて袴の丈を選ぶ方が賢明です。
見た目の印象としては、草履だと古典的で上品さが際立ち、ブーツはハイカラでハツラツとしたイメージ…といった違いが出ます。どちらも素敵ですが、それぞれに特徴があるので、きちんと把握しておきましょう。
なお、小学校の卒業式の場合は、校舎や式典会場に入る際、草履やブーツから上履きに履き替えなければならない学校が多いと思います。また、卒業式が行われる3月は寒さが厳しい日もあり、足元の防寒対策も必要になります。なので、もちろん見た目のイメージも大事なのですが、そのあたりの実用性も注意して、足元のスタイルと袴丈を選ぶのが、小学校の卒業式でのポイントと言えるでしょう。
草履の特徴
まだ成長期の初々しさに「和」ならではの雅なテイストが加わって、上品な袴姿になります。
草履のメリットとしては、どんな着物や袴に合わせても違和感なくマッチします。着物の色と合わせるなどのコーディネートも楽しめます。そして何よりサンダル感覚でサッと脱ぎ履きがスムーズです。
草履のデメリットは、草履の場合は必ず足袋を履きますが、普段の靴下と違い、足袋の上から上履きを履くのは難しいでしょう。また、草履の場合はブーツよりも袴丈をやや長めに着付けるため、ヒールがややある草履からペタンコの上履きに履き替えると、袴の裾が床についてしまい、引きずったり、踏みやすかったりします。特に階段などでは気をつけなければなりません。
草履を選ぶ際、美しく見える袴丈は長め(くるぶしが隠れる程度の丈)ですが、上履きに履き替えることを想定して、着付ける際に袴丈が少し短めになるよう着付けるのがおすすめです。
ブーツの特徴
大正時代の女学生を彷彿とさせる、レトロで可愛いハイカラさんスタイルにコーディネートでできます。
ブーツのメリットとしては、草履に較べるとブーツの方が履きなれているため歩きやすいでしょう。またブーツを履く場合は、足首あたりを目処に短めに着付けます。上履きに履き替えても、袴の裾を引きずらないという点もメリットです。他には、ヒールの高さがあるぶん、背が低いお嬢様でもスラリと長身かつ脚長に見え、スタイルアップが期待できます。また多少の雨や雪でもブーツなら水が染みにくく濡れません。お手持ちのソックスやタイツで防寒対策できるのは助かりますね。色は黒にしておくとブーツを脱いだときも、あまり違和感が出ないでしょう。
ブーツのデメリットは、脱ぎ履きのたびに紐をほどいたり結んだりするタイプのブーツでは、脱ぎ履きに手間が掛かります。まだ小学生の女の子にとっては大変でしょう。ほどいたり結んだりは大変ですから、ジッパーがついているものが便利です。ただし、コーディネートのバランスによっては、卒業式という式典にはふさわしくないカジュアルな雰囲気になってしまうことがあるので注意が必要です。
ブーツを選ぶポイントは、編み上げのショートブーツが王道です。編み上げタイプでない場合は、足首が締まっている形のものがベター。丈は歩くときに裾が上がっても肌が見えない15センチ以上が目安です。色は黒や濃い茶などのダークカラーが無難ですが、ここ最近は白系やベージュ系がトレンドになっています。
小学校の卒業式の場合は、上履きへの履き替え、脱ぎ履きや歩きやすさの問題、防寒対策など注意しておきたい点が様々ありありますので、草履とブーツそれぞれの特徴を踏まえてお選びください。
5.まとめ
小学生の卒袴予約は春から夏にかけて早めの予約がおすすめ!
ベストな時間が予約出来たら足元の草履かブーツなのかを先に考えておくと、袴の丈がスムーズに選ぶ事が出来ます。
お嬢様のなりたいイメージ、個性やキャラクターに合わせて考えたコーディネートは、きっと思い出深いものになるはずです。小学生の最後の日を彩るのにふさわしい卒業袴を、お嬢様と一緒に選んでみてはいかがでしょうか。